『雪男は向こうからやって来た』 角幡唯介
ヒマラヤ山中に棲むという謎の雪男、その捜索に情熱を燃やす人たちがいる。新聞記者の著者は、退社を機に雪男捜索隊への参加を誘われ、二〇〇八年夏に現地へと向かった。謎の二足歩行動物を遠望したという隊員の話や、かつて撮影された雪男の足跡は何を意味するのか。初めは半信半疑だった著者も次第にその存在に魅了されていく。果たして本当に雪男はいるのか。第31回新田次郎文学賞受賞作。
Amazonより
雪男はいると思いますか?
ヒマラヤにはイエティと呼ばれる雪男が生息しているという話を一度くらいは聞いたことがあるのではないでしょうか。
僕は雪男と聞けば毛むくじゃらで大きな体をした生き物を思い浮かべます。きっと多くの人がそうでしょう。
この本を読んで初めて知りましたが、日本を代表する登山家たちも雪男や雪男の痕跡を見ている人が意外と多い。
マッターホルン北壁を日本で最初に登った芳野満彦や、女性として世界初のエベレスト登頂を果たした田部井淳子などにも著者は取材をしています。
この本でキーマンとなっているのが鈴木紀夫という人物。
僕はこの人の名前を知りませんでしたが、フィリピン・ルパング島で小野田少尉を発見した人だといえば伝わるでしょうか。発見されたときは僕はまだ産まれていませんが、2014年小野田少尉が亡くなったことがニュースで流れた記憶がこの本を読んで蘇りました。
一躍時の人となった鈴木紀夫ですがその後はヒマラヤで六度に及ぶ雪男探索を行い、最期は雪崩に巻き込まれてしまいます。
また、著者と行動を共にする雪男探索隊のメンバーにも人生を賭けて雪男発見に情熱を捧げている人がいます。最初は雪男の存在を信じていなかったにも関わらずです。
彼らをそれほどまでに突き動かす雪男。
しかし、この本の主役は実は雪男ではありません。
ささいな出来事がきっかけで今までの価値観が吹っ飛び、人生をがらりと変えてしまう。
運命といっても良いくらいの出会いをした人間の心はどのように動くのか。
あとがきで三浦しをんが書いている通り、人間の深淵に迫る一冊です。
☆自分メモ
しばらくは角幡唯介を中心に読みたい。
アグルーカの行方 129人全員死亡、フランクリン隊が見た北極 (集英社文庫)