『歯とスパイ』ジョルジョ・プレスブルゲル 訳:鈴木昭裕
一本一本の歯を通して主人公の人生に触れていく。
主人公はどうやらヨーロッパのどこかの国のスパイらしいが、作中では仕事内容は詳しく書かれない。
なぜなら主人公の仕事など歯には関係がないからだ。
主人公は歯を抜くことによって喪失感を抱いたり、前歯に穴が空くと心に穴が空いたように感じて絶望したりする。
スパイの割にけっこう打たれ弱い。
主人公にとって歯は自分の分身なのである。
この本を読んだのは4月下旬頃で、いつの間にか5ヶ月経っている。
内容を鮮明に覚えているわけではないが、最後の方は妻や家族よりも自分の欲望を優先する主人公の行動にイライラして、なんじゃこいつと思いながら読んでいたことは覚えている。
歯に異常に肩入れする主人公だが、歯に限らず体の一部が傷ついたり痛めたりしたときは誰でもショックを受けて大なり小なり落ち込むだろうなと思った。