『歯とスパイ』ジョルジョ・プレスブルゲル 訳:鈴木昭裕
一本一本の歯を通して主人公の人生に触れていく。
主人公はどうやらヨーロッパのどこかの国のスパイらしいが、作中では仕事内容は詳しく書かれない。
なぜなら主人公の仕事など歯には関係がないからだ。
主人公は歯を抜くことによって喪失感を抱いたり、前歯に穴が空くと心に穴が空いたように感じて絶望したりする。
スパイの割にけっこう打たれ弱い。
主人公にとって歯は自分の分身なのである。
この本を読んだのは4月下旬頃で、いつの間にか5ヶ月経っている。
内容を鮮明に覚えているわけではないが、最後の方は妻や家族よりも自分の欲望を優先する主人公の行動にイライラして、なんじゃこいつと思いながら読んでいたことは覚えている。
歯に異常に肩入れする主人公だが、歯に限らず体の一部が傷ついたり痛めたりしたときは誰でもショックを受けて大なり小なり落ち込むだろうなと思った。
気になる外食の本
朝から雨が降っている。
雨の音を聞きながら本を読むのが結構好き。
鳥は雨でも意外と元気に鳴いている。
僕は家で静かに引きこもる。
『日本外食全史』(阿古 真理著)という本が気になる。時と共に変化する日本の外食について書かれている。
今でこそ外食は日常的な存在になっているが、かつては特別なイベントだった。
昭和が舞台のアニメでは、デパートのレストランがとても魅力的に描かれていたりする。
それがチェーンレストランやファストフード店の登場で外食が庶民の日常に溶け込んでいった。
大阪万博の開催も、日本の食の欧米化に大きく影響しているらしい。
経済成長真っ只中にいる日本人に、欧米の食文化はどのように映ったのか。
今まで口に入れたことはもちろん見たこともない食べ物が続々と日本に入ってくる時代、料理の作り手、食べ手がどのような気持ちになったのか追体験してみたい。