『白嶺の金剛夜叉 山岳写真家 白籏史朗』井ノ部康之
山岳写真界の草分けであり、日本を代表する山岳写真家・白籏史朗の生涯を井ノ部康之が描く。
『山と溪谷』2003年1月号から12月号まで掲載された
スーパー・ロングインタビュー「山岳写真家 白籏史朗 語りつくす」をもとに、
丹念な追加取材をして1冊にまとめ上げた評伝。
日本で山岳写真の道を切り開いた白籏史郎。
赤鬼とも呼ばれたエネルギー溢れる彼の一生が描かれています。
家庭の経済状況により高校進学を諦めた白籏。町の写真屋に飾ってあった一枚の写真を見て、「自分は自然を撮るカメラマンになりたい」という思いが芽生えます。
富士山写真家の岡田紅葉に弟子入りし、写真の世界に足を踏み入れた白籏。
東京の仕事場の近くには学校があり、授業帰りの学生たちを見て高校に進学できなかった自分に劣等感を抱くこともありました。
しかし、白籏はその気持ちをバネにして成長していきます。
個人的に印象的だったのが、助手でありながら普段はカメラを触る機会が少ない白籏が岡田から写真を撮ってみろと言われ、夢中で三、四枚パシャパシャと写真を撮るシーン。
「写真というのはそんな簡単にシャッターをきるもんじゃない!」
と岡田から叱られます。
私は写真を撮るのが好きで、綺麗な景色を見るとついパシャパシャと撮ってしまいますが、これって風景に撮らされているともいえるのですよね。
目の前の風景をよく見て自分がどこを良いと思ったのか、風景に撮らされるのではなく、自分から風景を撮れるようになりたいと思いました。
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「この人は写真を撮るために登っているのではなく、山そのものが好きなんだ」
「写真家であると同時に登山家でもある彼のことだから、彼の写真は常に生きている」
「常に美しいものに接すること。物事に感動する清新で柔軟な心を失わぬこと」
白籏史郎
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